【パキポディウム・グラキリス】発根管理マニュアル【土耕編】
今回のテーマはグラキリスの発根管理。
初めてでやり方が良く分からないという方、やってみたものの上手くいかないという方に是非読んでいただきたい記事となっています。
発根管理は水耕と土耕、大きく2つに分けられますが、今回は比較的手間のかからない土耕管理について解説していきます。
発根管理とは
発根管理とは読んで字のごとく、根のない状態の植物から根を出すための管理のことです。
グラキリスの場合、海外から日本国内に輸送される際に根をすべて切り落とした状態で輸送されます。
これは海外の病害虫が日本に入ってくるのを防ぐために行われます。
根のない状態の植物をベアルート株と言いますが、ベアルートのままではいずれ枯れてしまうので、そういった株を入手した際はなるべく早く発根管理を行ってあげる必要があります。
ちなみにパキポディウムなどの塊根植物や多肉植物はは特性上、塊根部や葉に養分を蓄えることが出来るので根を切られた状態でもしばらくの間生き延びることが出来ます。
発根管理を行う時期
発根管理を行うのにおすすめの時期は植物の成長期です。
グラキリスの場合で言うと5~9月くらいまでの間です。
この時期であれば特別な設備がなくても屋外で発根管理を行うことが出来ます。
逆に秋~冬にかけては難易度が少し上がります。
基本的には屋内での管理となり、暖房器具や送風機が必要になります。
また発根までに時間がかかることも多いので、発根管理が初めての方は株を腐らせてしまうなどのリスクも高くなります。
用意するもの
【必須なもの】
・ベアルートのグラキリス
・鉢
・鉢底石
・用土
・剪定ハサミ
・マスキングテープ
【あるといいもの】
・オキシベロン
・ベンレート
・ルートン
・ハケ
・メネデール
・鉢内温度計
・シートヒーター
・サーキュレーター
それでは一つずつ紹介していきましょう。
必須なもの
・ベアルートのグラちゃん
これがないと始まらない
・鉢
小さめの黒いプラ鉢がおすすめ
発根管理で最もよくある失敗が「蒸れによる腐り」。なるべく小さい鉢を使うことで水やり後の乾きが早くなり蒸れを抑えます。
黒いプラ鉢は日光で温まりやすく熱伝導率も高いので、発根に必要な温度をキープしやすくなります。
・鉢底石
水はけを良くするために粒の大きなものを通常より多めに入れましょう。
手乗りサイズのグラキリスであれば、用土の厚さは4~5センチあれば十分。
それよりも用土の層が厚くなってしまう場合は鉢底石で鉢を底上げしてあげましょう。
使うのは軽石や日向土でOKです。
・用土
こちらも水はけ重視で選んでいきましょう。市販のサボテン用土などでも大丈夫ですが、粒が大きく微塵の少ないものを選びましょう。自作する場合は小粒の赤玉土と日向土を1:1でブレンドすればOK。軽石や燻炭などを追加してもいいでしょう。
・剪定ハサミ
グラキリスの主根をカットするのに使います。繊維を潰さないようスパーンッと切れるものを使いましょう。
・マスキングテープ
植えこんだ株を固定するのに使います。
あるといいもの
・オキシベロン
液状の発根促進剤です。50~100倍に薄めて主根のカット部分を浸します。
・ベンレート
粉上の殺菌剤です。主根のカット部に塗布し、菌やウイルスが株内に侵入するのを防ぎます。
・ルートン
粉上の発根促進剤です。主根のカット部に塗布します。
・ハケ
切り口に塗布したベンレート、ルートンを馴染ませるのに使います。
・メネデール
活力剤です。主根断面の傷口を保護し、発根後の根の成長も助けます。
植え込み後1回目の水やりと、その後の水やりでもたまに使用してあげると良いです。
・鉢内温度計
用土に挿して鉢内の温度を測ります。外気温や鉢の表面温度ではなく鉢内の正確な温度が分かります。
・シートヒーター
鉢内温度が上がらないときに使用します。
・サーキュレーター
風のない室内で管理する際に使用します。
必須なモノとあれば良いモノに分けて紹介しましたが、少しでも発根確立を高めるためになるべく全部揃えることをお勧めします。
発根しなかった時に「アレもやっておけばよかったかなぁ~」となってしまうと悔やんでも悔やみきれませんので。
発根管理までの下処理
さていよいよ発根管理の要、株の下処理について解説したいきます。
まずはざっくりと手順を記しておきますす。
硫黄を洗い流す
↓
(乾燥1)
↓
主根を切る
↓
オキシベロン水に付け込む
↓
(乾燥2)
↓
ベンレート、ルートンを塗布
↓
(乾燥3)
↓
植え込み、固定
↓
水やり
↓
通常の発根管理に入る
それでは一つずつ説明していきましょう。
・硫黄を洗い流す
まず株元に付いた硫黄を洗い流していきます。
黄色い部分ですね。これは現地で殺菌の目的でつけられたものです。
隙間などに入り込んで取れないときは柔らかいブラシなどで優しくこすって落としましょう。
(乾燥1)
硫黄を洗い流したら日陰で2~3時間乾燥させましょう。
・主根を切る
しっかり乾燥させたら主根をカットしましょう。
先端から少しずつ切り詰めていって、みずみずしい部分が露出するまで切っていきます。
今後もし発根管理が上手くいかなかったときはリセットする必要がでてきますが、その時になるべく主根が残っていた方が成功確率が高くなります。
なるべく最低限のカットで済ませましょう。
・オキシベロン水に付け込む
次にオキシベロン水に12~24時間浸け込みます。
切り口だけ浸かるように調節してください。
付け込む前に切り口を乾燥させる必要はありません。
オキシベロンは水で50倍に薄めて使用してください。
希釈倍率、付け込み時間について色々なやり方があるのですが、今回はこちらを基準にしてください。
長く浸けたからと言って発根確立が上がるというものでもないです。
(乾燥2)
切り口が半乾きになる程度まで日陰で2~3時間乾かします。
カラカラに乾燥させてしまうと次の工程が難しくなります。
・ベンレート、ルートンを塗布
ベンレートとルートンを1:1の割合で良く混ぜ合わせて切り口に塗布します。
刷毛で塗ってもいいですし、直でつけて刷毛で馴染ませてもいいです。
ポイントは薄く塗布することです。厚塗りはかえって発根の妨げになります。
(乾燥3)
ベンレート、ルートンを馴染ませるために1日以上乾燥させましょう。
・植え込み、固定
鉢に植えこみましょう。発根管理株に限らず深く植えこみ過ぎないようにきをつけましょう。
先ほど(乾燥3)の工程がありましたが植えこんだ後に乾燥させてもOKです。
植え込んだら株が動かないようマスキングテープで固定します。
マスキングテープは二つ折りにして、粘着面が直接株に触れないようにします(剥がすときに表皮がハゲるのを防ぐため)。
・水やり
微塵が流れ落ちるまでたっぷり水やりします。
この1回目の水やりはメネデール水をかけてあげるといいでしょう。
切り口をイオンが保護してくれて修復が早くなる効果があるようです。
・通常の発根管理に入る
ここからが発根管理本番!しっかり発根するまで気は抜けませんよ
発根までの管理
置き場所
置き場相は風通しの良い明るい日陰がベストです。
未発根株は焼けやすいので直射日光はNGです。
水やり後の乾燥を早めるために風通しも重要です。
最低でも2~3日以内には完全に乾くようにしましょう。
水やり
水やりはしっかりとメリハリを利かせることが重要です。
早く発根させようと頻度が多くなってしまいがちですが、それは蒸れて切り口が腐ってしまうリスクが高まります。
用土が完全に乾いてから2~3日後に水やりするといったペースで十分です。
目安としては多くてもて3日に1回です。
その他の管理
・ベアルート株でも塊根部の養分のみで葉を展開することがあります。
葉が茂ってくると蒸散が活発になり塊根部の萎んでしまいます。
ある程度葉が出てきたら葉の1/4ほどを残してカットしましょう(1枚1枚の葉をすべて1/4カットします)。
・月に1回ほどでもいいのですが、気が向いたときは水やりにメネデール水を使用すると良いです。
メネデール自体に発根効果はありませんが、チョロ根が出ていた場合、成長をより促すことが出来ます。
発根に必要な温度、要する期間は?
発根までにかかる日数は株のポテンシャルに左右されます。
1ヵ月で発根するものもあれば半年以上かかるものもあります。
発根するまでは鉢内温度は高めに保ってあげましょう。
目安としては日中は25℃以上、夜間は15℃以上キープできると良いです。
これより低くても発根することもありますが、かなり時間がかかることもあります。
そういった場合はシートヒーターを敷くなどして保温してあげましょう。
なかなか上手くいかないときは
半年以上経過しても発根の兆しが見られない場合はリセットも視野に入れましょう。
半年経過していなくても株が急に萎んできたり、柔らかくなってきたらリセットしてみるのも手です。
主根をカットしベンレートに浸けるところからやり直します。
その際は株を良く観察し、なぜ発根しなかったのかを考察し次の発根管理に生かすようにしましょう。
(ほとんどの場合が水の遣りすぎによる腐りです。鉢内温度、水やり間隔、風の当て方をう風してみましょう)
まとめ
【手順】
硫黄を洗い流す
(乾燥1)
主根を切る
ベンレート水に付け込む
(乾燥2)
ベンレート、オキシベロンを塗布
(乾燥3)
植え込み、固定
水やり
通常の発根管理に入る
【必須なもの】
・ベアルートのグラキリス
・鉢
・鉢底石
・用土
・剪定ハサミ
・マスキングテープ
【あるといいもの】
・オキシベロン
・ベンレート
・ルートン
・ハケ
・メネデール
・鉢内温度計
・シートヒーター
・サーキュレーター
以上になります!
基本に忠実に管理していただければそれほど難しくはないはずです。
ただ、なかなか発根しない株があるのも事実。
ここで心配になって水を遣りすぎてしまったりいじくり回してしまったりするのが失敗のほとんどの原因です。
「腐らせなければいつか発根する」のスタンスで長期戦も見据えて管理すれば心に余裕も生まれます。
是非この発根管理マニュアルを何度も読み返して挑戦してみてください。
インスタもやってます。
分からないことがあったらコメントやDMで気軽に聞いてくださいね。
では!
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