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ユーフォルビア オベサ | 無機と有機の境界に佇む、緑の小惑星。

ユーフォルビア オベサ | 無機と有機の境界に佇む、緑の小惑星

ユーフォルビア オベサ

 

基本情報

  • 和名:キリン玉(きりんだま)

  • 学名:Euphorbia obesa

  • 科・属:トウダイグサ科 ユーフォルビア属

  • 原産地:南アフリカ共和国・北ケープ州(グレートカルー一帯の半乾燥地)

  • 生活型:多肉性多年草(球状〜短円柱状)

  • 生育速度:きわめて緩やか

  • 開花:微小な杯状花(雌雄異株)

  • 英名・流通名:Basketball plant ほか

  • バリエーションの例:小吹き型(側芽が出やすい)、群生型、綴化個体(扇状に変形)など

特徴と魅力

一見「ただの丸い多肉」と侮るなかれ。若株は掌にすっぽり収まる完球に近いフォルムを見せ、成長に連れてゆっくりと背を伸ばして短い円柱になる——その均整の良さは、洗練されたミニマルオブジェのよう。稜(りょう)と呼ばれる縦の筋がリズミカルに刻まれ、そこにできる陰影が立体感を生み出す。

個体差も大きな魅力で、濃淡の縞が鮮やかに入る株、稜が盛り上がって精悍に見える株、逆に柔らかな面で構成される株。ときに突然変異で綴化し、扇を広げるようにうねる姿は、唯一無二の一点物の宝飾のように視線をさらいます。派手さより均衡、飾り気より余白の美。シンプルゆえに、長く眺めても飽きが来ません。

成長過程や季節ごとの変化

  • 幼〜若株:球体に近く、表皮はマットな緑。稜は8前後が標準だが個体差あり。

  • 成株:短円柱状へとゆるやかに移行。株元や稜の谷部が徐々に木質化し、茶~灰褐色の質感が現れる。これがフォルムの陰影を強め、渋みを帯びた表情に。

  • 春〜初夏:気温上昇とともに動き出す。適度な潅水で締まった形に。

  • 真夏:高温で生長はやや緩慢に。直射が強すぎると肌焼けの恐れ。

  • :再びよく動くシーズン。花もこの時期に上がることがある。

  • :休眠的。乾かし気味に管理し、低温と過湿の同時発生を避ける。

育て方

  • 基本はしっかり陽に当てる。日照が不足すると成長点が持ち上がり形が崩れやすい。

  • 初夏〜盛夏は30%程度の遮光で肌焼けを予防。

  • 室内栽培は南〜東向きの窓辺+サーキュレーターで通風しを確保。補光はフルスペクトルLEDを株が焼けない距離で。

  • 成長期は「完全乾燥→たっぷり」が基本。鉢底から流れるまで与え、受け皿の水は捨てる。

  • 真夏は蒸れを避け、夕方以降の涼しい時間に。

  • 冬は断水気味。完全無潅水に不安があれば、晴れた午前に微量潅水(表土を軽く湿らす程度)で細根の活力を保つ。

  • 排水重視のサボテン・多肉用培養土が基準。自身で配合するなら赤玉:軽石=1:1にアレンジを加える(もちろんそのままでもOK)。

  • 植え替えは根の活動期(春〜初夏or初秋)に。

  • 通気性の良いテラコッタやスリット鉢が扱いやすい。黒色プラ鉢は冬の保温に寄与する場合も。サイズ大きすぎないものを。

温度

  • 高温には比較的強く、乾燥管理なら酷暑も耐える。

  • 低温は8℃以上を目安に管理。乾いていれば一時的な低温に触れても傷みにくいが、低温+湿りは厳禁。

肥料

  • 肥沃さを求めない性質。肥料は控えめが鉄則。植え替え時にごく少量の緩効性肥料を混和する程度で十分。

  • タネ採り後など体力を使った株には、生育期に薄い液肥を少量。与えすぎると形崩れや徒長の原因。

育てる際の注意点

肌焼け(サンバーン)

春の屋外出し直後や梅雨明け~盛夏は急激な強光で表皮が焼けやすい。段階的に日にならす、遮光、通風で予防。

 

徒長

日照不足と過湿が主因。成長点が突出して先細りに見えたら要見直し。

 

蒸れ・根腐れ

「乾かし気味」が最良の保険。鉢内の風通し(水はけ・用土の粒度・鉢材質)を最優先で設計する。

 

害虫

コナカイガラムシがつきやすい。見つけたら速やかに除去し、必要に応じて粒剤・スプレーで予防。

 

雌雄異株

タネ採りにはオス株・メス株の同時開花が必要。花が咲くまで外見での判別は難しい点を理解して入手計画を。

 

雑学コラム

  • 発見と命名の小史:19世紀末、南アのケープ州で採集された標本がキュー王立植物園に送られ、1903年にJ.D.フッカーによってEuphorbia obesaとして正式記載された。種小名“obesa”はラテン語の“太った”に由来。見た目を的確に表している。

  • 隠れる名手:自生地では小石混じりの地表に半ば埋もれるように生え、遠目には石ころそのもの。発見が難しいという。

  • オベサ沼:稜数(標準は8前後)が多い・少ない個体、縞の強弱、綴化など、バリエーションが尽きないため「次はどんな表情に出会えるか」というコレクション性の高さも魅力。

  • ヴィンテージの風格:年を重ねた株は木質化が進み、稜間の陰影が深まって一段と格好良く。実生5年超あたりから雰囲気がぐっと増し、10年級はまさに“逸品”。

  • 交配の楽しみ:雌雄を揃えて花期が重なれば、手作業での受粉も可能。自分だけの“次世代オベサ”を育てる楽しみがある。

まとめ

ユーフォルビア・オベサの極限まで無駄のない造形は、逆に味わい深く飽きのこない植物です。若株の完球から成株の渋い木質化へ——時間こそがオベサの美しさを完成させていきます。栽培の核心は「強すぎない十分な光」「乾かし気味の水」「通気性の高い用土と鉢」。これさえ押さえれば、初心者でも健康的で締まった姿に育てられます。雌雄異株ゆえの交配や実生、綴化・多稜など個体差の妙も含め、育てるほどに世界が広がる植物です。飾って絵になる、集めて楽しい。丸さに宿る均整美を、ぜひ味わってみてください。

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