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コミフォラ カタフ|ソマリアの砂漠に香る静寂の宝石

コミフォラ カタフ|ソマリアの砂漠に香る静寂の宝石

コミフォラ カタフ

 

基本情報

  • 和名:コミフォラ・カタフ(通称のみ)

  • 学名Commiphora kataf

  • 原産地:アフリカ北東部〜東部(ソマリア、エチオピア、エリトリア、ケニアなど)およびアラビア半島南部(イエメン、サウジアラビア)

    乾燥地の岩場や砂礫地に自生する、夏型のコーデックス(塊根低木)です。自生地では強い日射と乏しい降雨に適応し、太い幹と根に水分を貯蔵します。

特徴と魅力

白磁のように滑らかな肌、そこから伸びる濃色の枝。カタフは、砂漠に据えたミニマルな彫刻オブジェのようです。幹肌は時折、薄い皮がめくれて更新され、まるで絵画のキャンバスに新しいレイヤーが重ねられていくよう。枝先に展開する小葉は季節とともに表情を変え、宝石の座を支える繊細な爪飾りのように幹の存在感を引き立てます。コンパクトな株でも“景色を作る力”が強く、鉢一つでコレクション棚の主役になれる——それがカタフの最大の魅力です。

 

成長過程や季節ごとの変化

春の気温上昇とともに新芽が動き、春〜秋が生育期。暖かい間は葉と細根を増やし、幹に水分と養分を蓄えます。晩秋〜冬は休眠傾向となり、多くの株で落葉。幹肌は通年で少しずつ更新され、古い表皮が薄く剥がれて色味がわずかに変化します。鉢栽培では成長は緩やかで、樹形を崩さずに年輪を重ねるイメージ。自生地では低木〜小高木になる一方、家庭では盆栽的なサイズ感で楽しめます。

 

育て方

:年間を通して明るい直射〜強い半日向を好みます。真夏の西日に葉焼けが出る場合は、薄い遮光(20〜30%)で調整。風通しを確保すると徒長を抑えやすく、病害も予防できます。

:生育期は「用土が8割ほど乾いてからたっぷり」が基本。根は過湿に弱い一方、極端な長期乾燥で細根が痩せることも。乾かし過ぎ・湿らせ過ぎの両極を避け、季節と鉢の乾きに合わせてリズムを作りましょう。休眠期は回数を減らし、完全断水は避けて“極軽め”の潅水で根を守ります。

:排水の良い多肉向け配合(例:硬質赤玉小粒+軽石+砂/パーライトなど)。ローム質を少量混ぜると保水が安定します。pHは弱酸性〜中性が無難。

温度:高温を好み、寒さと霜に弱いため、目安として10℃以上をキープ。寒冷地では冬は屋内の明るい場所へ。

肥料:生育期に薄めの液肥を月1回ほど、または緩効性肥料を少量。与え過ぎは軟弱徒長や根傷みの原因になります。

鉢・置き場:通気性と排水性の良い鉢(素焼き・マット釉など)が相性良好。白肌が映える器を選ぶと観賞価値が上がります。

 

育てる際の注意点

  • 過湿と根腐れ:最も多いトラブル。水やりの際は用土の乾き具合をしっかり確認。

  • 低温ストレス:5〜8℃付近で葉傷み・根の停滞が出やすい。冷気が溜まる窓辺や玄関は要注意。

  • 急激な環境変化:休眠明けの“いきなり潅水”や屋外フル日射への急な移行はNG。水・光とも段階的に。

  • 病害虫:ハダニ、コナカイガラムシ、カイガラムシ、アブラムシが付きやすい株も。早期発見が肝心で、歪葉・ベタつき・細かなクモ糸を見逃さない。アルコール綿や殺虫石鹸、ニームなどで丁寧に対処。特に新芽にはアブラムシが付きやすい。

  • 樹液の取り扱い:切り戻し時の樹液で肌がかぶれる人もいるため、手袋推奨。

雑学コラム

カタフを含むコミフォラ属は、芳香のある樹脂で古代から知られてきました。近縁種の樹脂は宗教儀礼の薫香や薬用に用いられ、歴史の記録にもたびたび登場します。園芸的には、白い幹肌と黒〜濃褐色の枝の対比が“いわゆるカタフらしさ”として愛好家に評価され、産地による形質差もコレクションの楽しみ。ソマリア産に由来する白肌が際立つタイプや、葉形・枝色が異なるタイプが知られ、ラベル名(例:var. turkanensis)や産地名で流通することもあります。ただし分類・同定は議論が残り、最終的には個体差を観察して楽しむのが賢い付き合い方です。

 

まとめ

コミフォラ・カタフは、乾いた大地で磨かれた“白磁の彫刻”のような低木。強光・乾燥に適応し、鉢でもゆっくり端正に育つため、忙しい人でもリズムを掴めば長く付き合えます。ポイントは、水やりは8割乾かす→たっぷり、冬は控えめ/強い光・風通し/冷えと過湿を避けるの三拍子。病害虫の早期発見と段階的な環境調整を心がければ、年々幹肌は冴え、枝ぶりに“物語”が宿ります。名前や産地にこだわり過ぎず、目の前の株の個性を積み重ねていく——その過程こそ、カタフ栽培の醍醐味です。育ててみれば、棚の一角に小さなソマリアの景色が生まれます。

 

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