塊根の王様「オペルクリカリア・パキプス」。発根済みの株であれば、手のひらサイズでも数万円…。まさに値段も王様級。そんなパキプスですが比較的安価に入手する方法が種から育てること。そう実生です。しかしパキプスの種は発芽率がとても低く、私の過去の経験では発芽率1割以下という結果になったことも…。今回はそんなパキプスの発芽率をアップさせる方法「蓋開け」の方法を解説します。

 

パキプスの「蓋開け」とは？

「蓋開け」とはパキプスの種子をカッター等でこじ開けて発芽率をアップさせる方法です。パキプスの種子は硬質系種子に分類され、単に播種しただけではとても発芽率が低いです。理由としては、発芽の最初の段階である「幼根が種の殻を破って出てくる」前に力尽きてしまうためです。そこであらかじめ幼根が出てきやすいように、殻に穴を開けといてやるというのが今回紹介する「蓋開け」になります。パキプスの種子を触ったことがある方なら、「あんな硬い種をカッターで開けれらるの？」と思うかもしれませんが、手順とポイントさえ押さえれば意外と簡単です。蓋開け処理をした種子の発芽率は、上手くいけば５割以上にもなります。鮮度によっては３～４割にとどまる場合もありますが、それでも蓋開けしないよりは発芽率は高くなっているはずです。多少の手間はかかりますが、少しでも発芽率をアップさせるために、面倒でもやる価値はあると思います。

 

播種準備～発芽までの大まかな手順

今回は「蓋開け」の方法をメインで解説しますが、念のため私が普段行っている播種準備～発芽までの大まかな手順を紹介しておきます。

• ベンレート水に半日ほど浸して、果肉をふやかす(希釈倍率1000倍)
• 果肉を除去する
• 取りきれなかった果肉は固めのスポンジ等でゴシゴシ落とす
• 蓋(種の切れ目)を見つけて、カッターでこじ開ける
• メネデール＆ダコニールを混ぜた水に30分程度浸す(メネデール1000倍、ダコニールは目分量おそらく1000～2000倍)
• 蓋を開けた面を上にして表土に挿すようにして播種する。
• メネデール水で腰水して、朝晩はダコニール水で霧吹き
• 発芽

こんな感じです。

今回は②～④の部分の方法を紹介します。

 

 

「蓋開け」のやり方解説

まずはこちらの種をふやかして果肉を除去していきます。

 

こんな感じで果肉を剥いたら、キッチンペーパーで強くつまむようにして果肉と水分を拭き取ります。

それが↓の状態

この時点で蓋が見えるもの(画像右の種子)もありますが、ほとんどの種は見えないと思いますので、さらにゴシゴシしていきます。

一見綺麗に果肉が取れているように見えますが、蓋が見えない場合はもっと徹底的に果肉を除去する必要があるということです。

正直この作業が一番面倒なのですが、ここを徹底的にやっておくことで後に「蓋」を見つけるのが楽になるので頑張りましょう。

私はここでコレを使います↓

     

セリアに売っているメダカの産卵床。

ダイソーでも焦げ落としスポンジ的な名前で同じものが販売されていると思います(こちらは粒状の研磨剤が入っているので室内で使うと掃除が大変かも)。

これを…

 

こんな感じに使って果肉を除去していきます。

 

ちなみに蓋は大体この位置にあります。

なのでスポンジで擦るときは種子すべてを擦るのではなく、何となく蓋の位置のアタリをつけて行うと効率的です。

 

 

すると…

 

 

 

はい、蓋が見えました！

 

今回使用している画像は蓋が見やすいように色味を調整しているので本来はもっと発見しにくいと思います。よーく見てみてください。

 

ここまで来たらいよいよ蓋を開けます。

今回はカッターを使いました。(本当はダイソーに売っているデザインナイフが使い勝手が良いです)

 

まず蓋の線に合わせて刃を垂直気味にあてます。

そしてグッと力を加えて、刃を倒すようにして蓋を開けます。

 

↑これより葉を食い込ませると中の胚を傷つけてしまうので力は加減しながら。

 

上手くいくと…

 

 

こんな感じでパカッと空きます！

 

以上が②～④の手順になります。

私のこれまでの経験上、未処理の場合の発芽率は1割前後でした。そして蓋開け処理をした場合は上手くいけば5割以上の発芽率になります。ロットによっては３割程度しか発芽しない場合もありましたが、蓋開けをしなかった場合はもっと発芽率は低くなっていたはずです。手間はかかりますが「蓋開け」する価値はあるのではないでしょうか！