初心者にも育てやすい!個性豊かな“原種アロエ”の世界へ|おすすめ6選
“薬用”だけじゃない、アロエの奥深い世界へ
「アロエ」と聞くと、ヨーグルトの中に入っていたり、子どものころにおばあちゃんが火傷に塗ってくれたり――そんな身近なイメージを持つ方も多いかもしれません。けれど、実はアロエの世界はずっと広く、深いのです。世界中には数百もの種類があり、コレクションする愛好家も少なくありません。
日本ではまだそれほど注目されていないジャンルですが、一言で「アロエ」といっても姿かたちは実にさまざま。なかには、インテリアに映えるような造形美を持つ種や、野生の力強さを感じさせる種も存在します。
園芸店などではハイブリッド種をよく見かけるかもしれませんが、今回ご紹介するのはすべて「原種のアロエ」。それぞれが持つ個性を知ることで、アロエのイメージが少し変わるはずです。まずはこの中から「育ててみたい!」と思える一株を見つけて、アロエの奥深い世界に足を踏み入れてみませんか。
① アロエ プリカティリス|ムチムチとした葉が華やかなツリーアロエ
特長と魅力
一般的には「アロエ・プリカティリス」と呼ばれていますが、近年は「アロイデンドロン」という分類に移されています。本種はツリーアロエ、あるいは樹木アロエとも呼ばれ、大型化して見上げるほどの樹姿に育つこともあります。ただ、日本で育てる分にはそこまで大きくなる心配はなく、安心して観賞用に楽しめます。
幼い株は地面から直接、扇形の葉が生えるような姿から始まり、ぷにぷにとした質感の葉を放射状に広げて成長していきます。やがて幹が立ち上がり、枝分かれしながら複数の扇形を展開します。ひとつひとつの枝先に広がる葉がボリューミーで華やかさを演出し、まさにツリーアロエと呼ぶにふさわしい風格を帯びていきます。
また、水分管理で表情が変わるのもプリカティリスの面白さ。水が足りなくなると葉が薄くなり、与えるとたちまちムチムチとした瑞々しい姿に戻ります。水やりのタイミングは「葉の厚み」を目安にすると分かりやすく、少し薄くなった頃に与えるのがおすすめです。
耐暑性・耐寒性については、夏は直射日光が強すぎると葉焼けするため、軽く遮光してあげると安心です。冬は5℃以上を保てば問題なく越冬できます。
レア度 ★★★☆☆(3/5)
育てやすさ ★★★★★(5/5)
サイズ感 ★★★☆☆(3/5)
② アロエ・スプラフォリアータ|枯れ葉が織りなす古書のようなユニークな姿
特徴と魅力
スプラフォリアータは「ブックアロエ」という愛称でも知られ、その名の通り、本を開いたような独特のフォルムが最大の魅力です。外側の古い葉は時間とともに水分を失って枯れていきますが、あえて残すことで、まるで分厚い本を開いたかのような面白い表情を見せてくれます。
成長が進むと扇形の姿が少しずつ崩れ、やがてロゼット状に旋回しながら育ちます。しかし、成長が比較的ゆっくりなため、長い間「ブックアロエ」ならではの扇形の美しさを楽しむことができます。
また、その葉の展開にも個性があり、水平に広がるタイプ、下にくるんとカールするタイプ、さらには「カイゼルヒゲ」のように一度下がった葉が再び上に反るタイプまで様々です。同じ株でも成長の過程で葉の向きが変わることがあり、その変化こそが育てる楽しみのひとつです。
基本的には葉が下に垂れ下がる性質を持つため、鉢選びにも工夫が必要です。背の高い鉢に植えると、葉が地面につかず、美しいフォルムをそのまま観賞できます。
耐暑性・耐寒性については比較的強健で、冬は5℃以上を確保すれば安心。真夏は直射日光が強すぎる場合、2~3割ほど遮光してあげれば問題なく育てられます。
レア度 ★★★☆☆(3/5)
育てやすさ ★★★★★(5/5)
サイズ感 ★★★☆☆(3/5)
③ アロエ・ラモシシマ|樹形美を楽しむコンパクトなツリーアロエ
特徴と魅力
ラモシシマの魅力は、なんといっても枝ぶりの良さにあります。小さなうちは単頭で、一見すると地味で控えめな姿。しかし時間をかけて育てることで、株は分岐を繰り返し、やがてミニチュアの木のような美しい樹形へと変わっていきます。その成長の過程こそが、ラモシシマを育てる大きな楽しみのひとつです。
同じツリーアロエに分類される仲間の中には現地で大木に育つものもありますが、日本で管理する場合はそこまで大きくならないため、安心して観賞用として楽しむことができます。
耐寒性・耐暑性ともに強く、育てやすさも抜群。冬は5℃以上を保てば問題なく越冬できます。丈夫さに加え、見た目の繊細さや樹形の美しさから、近年では浅鉢に植えて“盆栽風”に仕立てるスタイルも人気を集めています。
レア度 ★★★★☆(4/5)
育てやすさ ★★★★★(5/5)
サイズ感 ★★★★☆(4/5)
④ アロエ・カスティロニアエ|まるで爬虫類!?独特の質感がクセになる小型アロエ
特徴と魅力
カスティロニアエは、その姿から「爬虫類のよう」と形容されることの多いアロエです。3〜5cmほどのカールした葉をロゼット状に展開させていきます。そして、地面を這うよう成長していき、全体として独特の存在感を放ちます。葉はマットな質感でザラつきがあり、そこに赤い斑点が無数に散りばめられるのが特徴です。この赤いドット模様が多い個体や、葉数が多く詰まった個体ほど人気が高くなります。
成長は比較的コンパクトで、大型化する心配はありません。株元から小株を出して群生するように増えていくため、群れをなすような姿に仕立てると非常に見栄えがします。もちろん、切り離して株分けすることも可能ですが、時間をかけて鉢からあふれ出すほどの群生姿を楽しむのがおすすめです。
また、近年ではハイブリッドアロエの親としても利用されることが多く、人気の高まりとともに市場価格も上昇している注目株です。
耐寒性・耐暑性ともに強く、冬は8℃以上を確保すれば安心。環境によっては、肥料切れや強光で葉が薄くなったり退色することもありますので、その際は管理方法を見直してあげましょう。
レア度 ★★★★☆(4/5)
育てやすさ ★★★★☆(4/5)
サイズ感 ★★★☆☆(3/5)
⑤ アロエ・エリナケア|鬼のこん棒のようなタワー型アロエ
特徴と魅力
エリナケアの最大の特徴は、そのトゲトゲとした見た目。幼い株では成長点付近の棘が乳白色で透明感を帯びており、触ると意外と柔らかい質感です。しかし、成長するにつれて棘は黒く変化し、よりワイルドで厳つい印象に。
株はまず直径20cmほどまで成長しますが、その後は横に広がることは少なく、上へ上へと積み重なるようにタワー型に伸びていきます。その姿はまるで「鬼のこん棒」を思わせ、他のアロエにはないユニークな存在感を放ちます。日当たりを好みますが、真夏の直射光は葉焼けのリスクがあるため、やや遮光して管理すると安心です。耐寒性はある程度ありますが、冬は5℃以上を確保すると安心して越冬できます。比較的丈夫で環境に適応しやすいため、初めてトゲ系アロエに挑戦する方にもおすすめです。
レア度 ★★★★☆(4/5)
育てやすさ ★★★☆☆(3/5)
サイズ感 ★★★☆☆(3/5)
⑥ アロエ・スザンナエ|気品あふれるアロエ界の至宝
特徴と魅力
スザンナエは、ワシントン条約で厳重に保護されている、世界的にも希少なアロエです。野生では個体数が50を切るとも言われ、絶滅が危惧されています。その一方で、近年は実生株の流通が増え、少しずつ入手しやすくなってきました。
成長は非常にゆっくりで、1年に葉が1枚増えるかどうかというペース。市場に出回る株は、葉が3〜4枚、高さ15〜20cmほどの若い実生株が主流です。野生では人の背丈を超える巨木に育ち、樹齢数百年から数千年とも言われていますが、日本で栽培する場合はそこまでの大型化は心配無用。むしろ“一生をかけて育てるアロエ”として、長期的に楽しむことができます。
若い株はシンプルで地味に見えるかもしれません。しかし、ゆっくりと葉を増やし、年単位の成長を重ねていく姿は、気品に満ちた美しさを放ちます。まるで時を超えて存在するかのように、悠然としたオーラを漂わせる特別なアロエ。それがスザンナエです。
環境が合わないと成長が止まってしまうこともありますが、枯れにくく丈夫な種類です。調子を崩しても、環境を整えることで回復してくれるため「育てやすさ」は中程度といえるでしょう。
耐寒性・耐暑性はともに強く、冬は最低でも7℃以上を保てば問題ありません。ただし、元気に成長させたい場合は、冬でも15℃程度を確保できる環境がおすすめ。夏は少し遮光してやれば十分です。
レア度 ★★★★★(5/5)
育てやすさ ★★★☆☆(3/5)
サイズ感 ★★★★☆(4/5)
自分だけのお気に入りアロエを見つけよう
アロエというと、どうしても「食べる」「薬用」といった実用的なイメージが先に立ちますが、観賞用としてのアロエの魅力はそれ以上に奥深いものがあります。今回ご紹介した プリカティリス、スプラフォリアータ、ラモシシマ、カスティロニアエ、スザンナエ は、いずれも個性的で育てがいのある原種アロエたち。
どれも違った魅力を持っていて、
扇形に広がるプリカティリスの華やかさ
本を開いたようなスプラフォリアータのユニークさ
樹形美を楽しめるラモシシマ
爬虫類を思わせるカスティロニアエの質感
鬼にこん棒のような厳ついエリナケア
悠久の時を生きるスザンナエの気品
と、それぞれに独自の表情があります。
もちろん、アロエは一度育て始めると環境や管理次第で表情が変わる植物でもあります。葉の厚みや色合い、株姿の変化を観察していくのは、日々の小さな驚きや発見につながります。
初心者の方にとっても、まずは1株から手にしてみるのがおすすめです。大きくなりすぎる心配もなく、丈夫な種類も多いので安心してチャレンジできます。経験者にとっては、それぞれの個体差や成長過程を楽しみながら、自分だけのコレクションを作り上げていく醍醐味があります。
アロエは“身近だけれど奥深い植物”。ぜひお気に入りのアロエをひとつ見つけて、ゆっくりとした成長の時間を共に楽しんでみてください。
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